山内和弘選手の三題噺
ゲームを作り調べていきますと、いろいろなご縁ができまして、お話を伺う機会もありました。
積極的な取材という訳ではありませんが興味深かったですね。
そんなデザイナーズノートとは別の思い出も書いていきましょう。
その時気づいたのは、いくつかの話をつなぎ合わせてみると、より興味深く感じられるのではないか ということです。
1.野村克也氏の山内選手評
21世紀目前の頃、「20世紀ベストナイン」の話はよくでてきました。
あるテレビ番組で、「野村克也が選ぶベストナイン」をやってました。
野村克也氏は、「自分が選ぶのだから守備の中心」と前置きをしてから選んでいきました。
外野手は、福本豊選手、イチロー選手ときて3人目。
野村「うーん、山内和弘やね。」
隣にいたサッチーが、「山内さんって、早いの?」と聞きました。
野村氏は、「なんで」と聞き返します。
サッチー「だって、あんた早い選手好きでしょ。」
これに対して、野村氏は「はやくはない。けれどムダがない。フライを追う時も、あと何歩でフェンスかというのがわかって追っている。だから、フェンスに激突するような不細工なマネはしない。」
続けて、「あれほどムダのない選手はみたことがない。」とも言ってました。
これだけだと、山内選手が優れた選手ということだけですね。
次の話を見ると、若干印象が変わるかもしれません。
2.別当選手と山内選手の会話
これは、山内選手から実際にうかがった話です。
時は、山内入団1年目ことです。(1952年)
新人のペーペー(本人談)の山内選手が別当選手に呼び止められます。
ついでいうと、別当選手は3番を打ち、飛ばないボールで18本と本塁打は減りますが、それでもチームトップ。しかも40盗塁という快足。シーズン後半は兼任監督になるという大物です。
別当薫(以降 別)「お前、野球で一番怖いものがなにか知っとるか。」
山内和弘(以降 山)「わかりません。」
別「ボールや。あんな硬いものが凄い勢いで飛んでくる。へたにぶつかったら死んでしまう。」
山「はい。」(何がいいたいのか わかってない 本人談)
別「このチームには、ボールと同じ位怖いものがある。わかるか。」
山「わかりません。」
別「お前や。見境いなくボールだけ見て追うな。周囲(フェンス・他の選手)を意識して追え。ぶつかったら、どうするんや。」
当時のオリオンズの外野手はセンター別当選手、レフト呉昌征選手、ライト伊藤庄七選手で固定。
堅守の一塁手 西本幸雄選手がファーストに入れば、チームトップタイ18本塁打の三宅宅三選手が外野に回ります。
山内選手としては期待の新人ではあるものの、別当選手の気に障ったたら大変です。
山内選手は守備の意識してプレーするようになります。
3.別当選手のポジション
これは、「別当薫さんのおくる集い」で複数の方からうかがったものです。
整理すると・・
・別当選手はセンターを守りたかった
センターで自分の走力を生かし、自由に守備したかった。
ライトに若干窮屈さを感じていた。
タイガースでは、後藤次男選手、呉選手が主にセンター。
オリオンズでセンターに定着し、本人も気に入っていた。
また、守備での評価も高まった。
3つの話を牧の邪推も含めてまとめると・・
・別当選手はセンターが気に入っていた。
・新人(山内選手)がはいってきた。結構打つのはいいのだが、守備でみさかいなく突っ込んでくるのであぶなくてしょうがない。
自由に走れないと守備での自分の良さがでてこない。
文句いってやる。
・山内選手から見ると、逆らうことできないひとから助言。
言うとおり、一生懸命やらなかったら使われないのはこっちの方。
そして、元来の性格もあり、「ムダのない選手」へ
ちょっと話が膨らんだ気がしませんか?